支店・従たる事務所の所在地における登記の廃止
商業登記分野では、改正会社法や改正商業登記規則の施行に伴い、令和4年9月1日から複数の新しい運用が始まっています。今回施行された改正の中で、実務的に多くの会社に影響があると思われるのが、「支店・従たる事務所の所在地における登記の廃止」です。支店については、これまでは本店の所在地の登記所で登記をして、更に支店の所在地の登記所でも登記をする必要がありましたが、今後は支店の所在地の登記所での登記は不要になります。支店所在地における登記は廃止されますので、今後は支店の所在地の登記所で登記を申請しても、却下されることになります。なお、令和4年9月1日時点で既になされている支店所在地における登記は、登記官によって職権で抹消されます。
支店所在地における登記は、その本店を調べることを主目的としており、登記事項も限定されていることや、インターネット等で簡単に会社の情報を入手することができるようになったこともあり、近年はあまり利用されていなかったようです。そこで、支店所在地における登記の申請義務を負う会社等の負担を軽減するためにも、支店所在地における登記は廃止されることになったようです。
注意が必要なのは、廃止になったのは、“支店所在地における”支店の登記で、“本店所在地における”支店の登記に関しては、従来通りであるということです。支店設置や支店移転、支店廃止等をした場合は、今後も本店の所在地の登記所への登記申請は必要です。
例えば、東京都中央区に本店を置く株式会社が、千葉県内と埼玉県内にそれぞれ支店を設置していた場合、今回の改正で、千葉地方法務局における千葉支店の登記と、さいたま地方法務局における埼玉支店の登記は廃止となり職権抹消されます。一方、本店の所在地である東京法務局における本店の登記記録中の千葉支店と埼玉支店に関する部分は改正の影響を受けません。いずれかの支店に関して移転や廃止があった場合は、本店の所在地である東京法務局への登記申請は必要です。
少しややこしい話に感じられるかもしれません。会社その他の法人の登記に関するご質問等がございましたら司法書士が丁寧にご説明しますので、お気軽にお問い合わせください。