登記は、「どの司法書士さんに頼んでも同じ」とよく言われますが、実際はどうなのでしょうか?
確かに、登記の原因となる法律行為(売買や贈与など)が既に発生している場合には、あまり差はないかもしれません。登記の内容は既に決まっていますので、どの司法書士さんにお願いしても結果は同じです。違いがでるとすれば、親切の度合いや登記完了までのスピードくらいでしょうか。(親切の度合いというのは、どれくらい丁寧に質問や要望等に対応してくれるか、書類を揃えるにあたってお客様の負担が少なくなるようどれくらい配慮をしてくれるか、といったようなことです。)
しかし、これから「こういう法律行為を考えているので登記をしたい」といったご相談であれば、結果に明らかな違いがでる場合があります。いくつか具体例でご説明しますね。
以前、お母さんおもいの息子さんがご相談にお見えになりました。一人暮らしのお母さんが老後も住居の心配をすることなく安心して生活できるように、息子さんが所有する不動産をお母さんに贈与したいという趣旨でした。ご依頼どおりに贈与の登記をするのが簡単なのですが、税金の問題も考えなければなりませんし、その動機や背景事情によっては、贈与以外の方法がお客様にとって望ましいと考えられることもあります。このお客様の場合も、詳しくお話をお伺いすると、複雑な事情がありました。そこで私の方で4つほど選択肢を提示し、メリット・デメリットを詳細にご説明しました。その結果、お客様は贈与ではなく民事信託・家族信託という手法を選択され、大変ご満足いただきました。
相続登記のご依頼でも、こんなことがありました。ある不動産を相続人全員で相続するので、その手続きをして欲しいという趣旨でした。詳しくお話をお伺いすると、その不動産は売却することが前提とのことでしたので、その後の売却手続き時の相続人の皆様のご負担等も考慮し、皆様のご意見を伺ったうえで、相続人全員の名義ではなく、相続人代表お一人の方の名義で相続登記をし、売却手続きは代表者の方に任せるという形(換価分割)にしました。税金の申告の問題もあり、税理士さんとの打ち合わせも必要になるなど、通常の手続きよりも手間はかかりますが、無事に売却が完了したときには、お客様から改めて感謝のお言葉をいただきました。
既に法律行為が発生している場合についても、1つ具体例をお話します。第三者間の不動産の売買の登記のご依頼だったのですが、不動産の調査をすると、既に消えているはずの金融機関の古い担保権がそのまま残っていることがわかりました。その金融機関はすでに解散しており、その承継先も不明という状況でしたので、担保権の抹消の手続きは簡単ではなく、予定していた売買代金の決済日は延期せざるを得ませんでした。しかし売主様は売却を急いでいるご様子です。そこで大急ぎで金融機関に関する調査をすすめ、金融機関の関係者の候補を絞り込みました。郵便では連絡に時間がかかりますので、何とか電話番号を調べて、何件か問い合わせの末、登記手続きの当事者になるべき方とコンタクトがとれまして、直ぐにお会いして打ち合わせを行い、調査開始から3日程で担保権抹消の手続きに必要な全ての書類を揃えることができました。
どれだけ親身になってお客様のご要望に沿ったかたちで動いてくれるかは、司法書士さんによってそれなりに差が出るのかもしれません。